「紹興酒、美味しい!」
「うわあああ、これは飲めない・・・」
とても個性的な味わいの紹興酒は、好き嫌いがはっきりと分かれるお酒だと思います。実は紹興酒を始めとした黄酒には6つの味の基準があるということはあまり知られていません。これを知っておくと、自分の好みが明確になり、より紹興酒が楽しめるようになるはずです。
ここでは紹興酒の味について解説していきます。
Contents
この記事を書く「八-Hachi-」の紹介
中華郷土料理店にて9年勤務。そのうち4年間は黄酒・白酒の通販専門店の運営を兼任。現地紹興へも行き、酒蔵訪問などもしました。
元々紹興酒は苦手だったものの、仕事を通じて段々と好きになり、今ではひとりで町中華などをぶらりとしながら紹興酒をちびちびと呑むのが夜の楽しみです!
↓ひとりでも気軽に紹興酒せんべろできる中華料理店のレポートをまとめてMAPにしています。
この記事でわかること
紹興酒とはどんな味わいのお酒なのか。味の構成について知ることができ、より深く紹興酒の世界へ踏み込むことができます。
さらに詳しく紹興酒全般について知りたい人はこちらをご参照ください!紹興酒について一通りのことがわかるはずです。

紹興酒とはどんな味なのか?一般的な感想をまとめてみた

紹興酒の味を言葉で表現するのは大変難しいのですが、他のお酒にはない、かなり独特な味わいです。ツンと鼻奥に広がる酸にさまざま入り交じる香りが個性的。
Twitterなどから引用してみると・・・
Good!!
・レーズンや梅を漬けたような味。
・小籠包と紹興酒の熱燗最高
・中華には紹興酒がよく合う!
・・・etc
Bad…
・薄めた醤油みたい
・クセがあってイマイチ
・養命酒みたいで癖が強い
※養命酒がダメというわけではありません
・・・etc
古酒やシェリーを飲んだ感想で「紹興酒みたい!」というコメントをよく見かけます。おそらく熟成酒によく見られる「ソトロン」を強く感じるからだと思います。
紹興酒は熟成酒。日本酒では「ひね香」といって劣化の臭いを指す名称があります。少しすえたような香りで、紹興酒にもひね香に近いものを感じる人が多いようです。
中国は発酵文化の始まりの国。さまざまな発酵食品がある中で、普通に食べたら「なんだこれ?!」と驚くものがたくさんあります。紹興酒もそれと同じ。ひと言で「ひね香みたい」と括るのではなく、しっかりと味わってみると新たなお酒の世界がきっと開くはずです。このお酒の奥深さにはまると、抜け出せなくなると思いますよ。。。
黄酒(紹興酒)の味を成り立たせている6つの味覚

黄酒は6つの味覚のバランスで成り立っているとされています。それは
「甜」「酸」「苦」「辣」「鮮」「渋」
です。それぞれ解説します。
「甜」(ティエン)・・・甘味
シロップのような甘さの度合。黄酒の甘味は糖分が元で主な成分としてはブドウ糖やイソマルトース、マルトースなどです。
■成分について
ブドウ糖:果実やハチミツなどに含まれている。甘味の元
イソマルトース:酒やハチミツに含まれる
マルトース:別名麦芽糖。キャンディー、アイスクリームなど菓子類や、佃煮など食品の甘味料として用いられる
「酸」(スワン)・・・酸味
すっぱさの度合。黄酒の酸は乳酸、酢酸を主として、次にピログルタミン酸、コハク酸と酒石酸などの有機酸。酸は黄酒の濃厚味を強くすることと甘味を抑えてバランスを取る役割があります。
■成分について
乳酸:ヨーグルトやチーズに含まれている
酢酸:お酢に含まれる
有機酸
ピログルタミン酸:醤油に含まれる
コハク酸:貝類に含まれる旨味成分
ワインやビールに塩味、苦味、酸味を与える
酒石酸(しゅせきさん) 酸味のある果実(特に葡萄やワイン)に多く含まれる
「苦」(クー)・・・苦味
苦さの度合。黄酒には多種のアミノ酸が含まれていて黄酒の味の元となっています。アミノ酸のうち、8種類のアミノ酸は苦味。少し甘酸っぱさを生み、黄酒にたくましさとさっぱりとした味わいの特徴を与えます。
■成分について
アミノ酸の苦味成分8種
・フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン
「辣」(ラー)・・・ドライ
吟醸香のようなアルコール臭さの度合。アルコール、イソアミルアルコール、高級アセトアルデヒドなどの成分で構成されます。適当な辛味は食欲を出せる作用があり、黄酒に欠かせない味の一つといえます。
■成分について
イソアミルアルコール:ラム酒やウィスキーの香りの元、高級アルコール。
イソアミルアルコールとはインキのような香りで、ホワイトボードのマーカーのようです。普通のエタノールより、重めの味わいで辛口の源です。 高級アルコール類は例えば本格焼酎におけるコクや旨味のもとともいえます。
「鮮」(シエン)・・・旨味
旨味の度合。 主にアミノ酸の中のグルタミン、 アスパラ ギン酸、 発酵で酵母が分解されたヌクレオチドなどが元になっ ています。 鮮味は黄酒と他の酒を区別できる大きな要素と もいえます。
■成分について
グルタミン:昆布ダシの主成分。酸味の素。
アスパラギン酸:旨味や酸味の素。
※この二つはトマトの旨味を握っている
ヌクレオチド
イノシン酸
グアニル酸:よくダシとして使用されるものに含まれる。椎茸など
「渋」(スー)・・・渋味、えぐみ
えぐみの度合。黄酒の渋味は主に乳酸、チロシン、ブタノールとペンタノールなどの成分で構成されています。適度な渋みは酒を更に濃厚さと柔らかさを与えます。
■成分について
乳酸
チロシン:苦味成分。 バナナやアボガド。ジャリっとした食感の元にもなる
ブタノール:香辛料(スパイス)からその有効成分を抽出
ペンタノール:チーズ等に天然に存在する成分
紹興酒が初めての人、ツウの人におすすめの味わい

ここからは個人的な見解になりますが、中華郷土料理店で9年お客さんにおすすめし続けてきた僕が見つけた”好みの法則”に則って、紹興酒のおすすめをお伝えします。
「紹興酒が初めて」など初心者入門者におすすめの味わいとは?

紹興酒が初めてという人には、クリアで爽やかな味わいだったり、ほんのり甘味があるタイプのものがおすすめです。
紹興酒らしい味、というのは、ツンとくる独特な味わいが強烈に感じられるものだと思います。紹興酒が好きな人はそれを求めるのですが、まだ飲み始めたばかり、という人や苦手な人はこの味が苦手、という人が多いのです。
6つの味覚でいえば、「苦」「渋」「酸」「辣」あたりが優しく感じられるものがよいと思います。と言われても、どれがいいのかわからないと思うので、僕自身のおすすめを下記に記載しておきます。
紹興酒初心者におすすめのブランド
東湖12年(ドンフー)
僕が中華郷土料理店で勤務していたときに出会った紹興酒です。黄酒の卸営業をしていたときも、このお酒はたくさんのお店におすすめをして、置いて頂いた紹興酒の中で、シェフやフロアの方の感想がよかっただけではなく、「お客さんがファンになってラインアップから外せない」ということがとても多かったです。
味わいの特徴としては、すっきりとした酸味のあとに、心地よい甘味と旨味が口の中に広がります。雑味がなく、「これ、紹興酒!?」と思えるぐらい非常に飲みやすいです。ボトルデザインも可愛らしくて目を引きます。ネックとしては、コルクが弱いのとボトルの形状のせいで開栓後にお酒の空気に触れる面が広いため、劣化しやすいです。開栓したらなるべく早めに飲んだ方がいいですね。
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孔乙己12年(コンイージー)
“紹興酒の皇帝”とも言われているかつての六大紹興酒「黄中皇」を製造する中粮酒業のもうひとつのヴィンテージブランド。孔乙己にもいろいろな種類があるのですがこの種類は厳密には紹興酒とはいえません。なぜかというと原料が日本酒同様、お米を使っているからです。※紹興酒はもち米が原料です
紹興酒と比較してこれもまた爽快でするっとぬけていく喉越し。後からふわりと香る味わいも優しく、大変飲みやすい黄酒だと思います。
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紹興貴酒8年(しょうこうきしゅ)
Amazonなどで手軽に入手できる紹興酒。味わいはまろやかで、嫌みなく飲みやすいです。飲みやすさを追求したのがよくわかります。詳細は以前レポートとしてアップしているのでよかったらご参考ください。瓶式なのでコルク式のボトルよりも保管は長く可能です。

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「紹興酒が大好き!」というツウな人におすすめの味とは?

紹興酒ツウの人は、ツンとくる紹興酒特有の風味を追い求めます。なので、初心者向けのところで説明したお酒とは反対にあるようなお酒こそ、好みに近いものとなります。
6つの味覚でいえば、「苦」「渋」「酸」「辣」がどっしりと感じられるもの。バランスがいいものでもいいと思いますし、どこかが突出しているものでも好まれたりすることもあります。こちらもおすすめのブランドを下記に記載します。
紹興酒ツウにおすすめのブランド
神気10年(シェンチー)
このボトルデザインがいかにも中国酒という感じでそれもいいのですが、飲んでみてもガツンと昔懐かしい古風な味わい。紹興酒らしさをダイレクトに感じられるフルボトル的なポジションの紹興酒だと思います。やや酸が飛び出ていながらも、渋味や苦味、全ての味をまとめるアルコールのどっしり感がこのお酒の強さを支えています。
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黄中皇5年(ファンジョンファン)
かつて六大紹興酒として古越龍山、会稽山、塔牌などと共に紹興の代表ブランドである「黄中皇」(ファンジョンファン)。独自の黄金比率が生み出した濃醇な味わい。5年ならではの荒ぶれた若々しさこそツウが追い求める味にふさわしいといえます。
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紹興原酒10年
紹興酒は基本的にブレンドをします。10年物であれば、10年の原液を主流として、5年と12年物を混ぜたり、などして味を生んでいくのです。そういう文化の中で、このお酒は原液のみの純10年を謳って日本でも広められている紹興酒です。東京都内の有名中華料理店でも好評で、グランドメニューのラインナップに入れているお店もちらほら見かけます。
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いかがでしたでしょうか?紹興酒と一口にいっても日本酒やワイン同様に、さまざまなブランドがあります。そして味わいもそれぞれです。味の特徴を掴んでおけば、自分の好みに合わせてお酒選びもしやすくなります。最初の内は、何を飲んだらわからない状態だと思いますので、こちらでもSNSのアカウントでも気軽にいつでも話しかけて頂ければできるだけわかる範囲でお答えさせて頂きます。よい黄酒ライフを!!