紹興酒入門

【入門編】紹興酒の基礎知識を中国酒専門店の元店長が詳しく解説!

紹興酒とはどんなお酒なのでしょうか?中国のお酒とは知っていてもその実態についてはよく知らない、という人は意外と少なくありません。

ここでは、その産地の紹介やおすすめの飲み方、紹興酒に合う料理などを中国酒専門店の元店長として、まとめて解説してみたいと思います。

 

これで原料や飲み方まで紹興酒の基礎知識がざっと丸わかり!

紹興酒のことをざっと簡単に知りたいという方に向けて、定義や産地、歴史などについてまとめました。

これを読めば紹興酒がどんなお酒なのか、ざっくりとご理解いただけるはずです。

その①定義とは?産地や原料の等級など国の基準で定められた中国が誇るブランド酒

紹興酒の甕を開けている写真です。

紹興酒とは、浙江省紹興市を産地とし、国家基準をクリアして認められた黄酒(醸造酒)です。

ちなみに黄酒とは中国最古の醸造酒の一大ジャンルであり、その中で最も代表的なものが紹興酒です。

後ほど詳しく解説しますが、主原料に糯米を使用し、麦曲(麹)を用いて甕の中で並行複発酵させていくお酒です。この製法は日本酒も同様で、そのルーツという説もあるぐらいです。

紹興市で造られたもの=紹興酒という説明がされるときもありますが、厳密にはそれは間違っています。なぜなら産地が全ての条件ではないからです。

麹で使用する小麦の等級や、水の指定などさまざま基準があり、それらをクリアしないと紹興酒とはいえないのです。

紹興で作られた黄酒でも、紹興酒とはいえないお酒もある、ということです。

なお、国が認めたものには、ボトルか化粧箱どこかしらにこの写真にあるマークがついています。

正式な紹興酒を証明する中国の地理的表示のマークです。

これは「GI(地理的表示保護制度)」によって国家に認定された証です。

紹興で造られる=紹興酒、ではありません。これは紹興酒は上質なお酒である、という認識を持って頂くためにはとても大事なことです。

紹興酒と同じような原産地を名称に入れたお酒は世界にもたくさんあります。どんなお酒があるのかを、下記のページで紹介しています。あのお酒も産地の名前なの!?と驚かれるものもあると思います。紹興酒もより身近に感じて頂けるのではないでしょうか。

シャンパンやテキーラと一緒!?”原産地名称”の世界のお酒と紹興酒について。

 

その②産地とは?上海の南にある水郷に恵まれた”東洋のベニス”

浙江省紹興市の風景写真です。

街中を歩いていると、至る所に川や湖があります。東洋のベニスと称されるのも納得です。名水あるところに名酒あり。紹興酒の血液ともいえる、大切な源です。

紹興市は上海の南、中国東南エリアにある浙江省の都市です。人口は約440万人。日本と一概には比較できませんが、参考までに横浜市の人口が約380万人なのでその街の大きさはなんとなくイメージできるのかなと思います。

↑緯度は九州と沖縄の間ぐらい。日本とも近いです。

中国の文豪、魯迅の生誕地としても知られる場所。気候は日本同様に四季が感じられる日本人も馴染みやすく過ごしやすい印象です。ソメイヨシノがたくさんあったりする面もなんだか親近感が湧きますよね。

上海から新幹線で1時間弱と近い方だと思うのでぜひ気軽に行ってみてほしい場所です。

ちなみに2019年11月、紹興へ行ったときのことが中華メディア『80C』にて掲載されております!良かったらご覧ください。

中国酒ラビリンス1|いざ、紹興酒の故郷へ!黄酒フェスティバルに行ってきた

 

その③歴史とは?今の原型は南宋時代に隆盛したもの

紹興酒の誕生を辿っていくと、今から約2400年程前の春秋戦国時代の頃を記した書物「呂氏春秋」には、越王である勾践(こうせん)が住む会稽(かいけい。現在の紹興)にて川から酒を流し、それを飲んだ兵士たちが鼓舞した、というような表記があります。日本でいえばまだ縄文時代にあたるこの時期、既にみなが楽しめる飲用のお酒があったことだけでも、驚くべき文化の発達スピードです。

今の紹興酒の原型ともいえるお酒は、紹興で酒造りが最も隆盛した南宋時代。今から約1000年ほど前に誕生したと言われています。今の紹興酒は多くがこの頃の製法で造られているようです。

 

その④原料や製造法とは?糯米を並行複発酵で醸していく

紹興酒の製造法を簡単に解説すると、紹興市を流れる36の水脈の総称「鑒湖(かんこ)」の水で仕込み、原料のもち米を麦麹で糖化発酵し、甕やタンクで醸造。発酵期間は合計で3ヶ月ととても長く、搾ったあともさらに熟成させていくため非常に手の込んだお酒であると言えます。日本酒とは原料の違いはありますが、それぞれ並行複発酵で造られる、世界的にも珍しいアジアを代表する醸造酒なのです。

原料についての詳しい解説はこちらにまとめていますのでご興味のある方は見てみてください。製造法についても、より詳しい工程をまとめていけたらと思っています。

何からできている?紹興酒の原料について中国酒専門の元店長が解説!

 

その⑤意外と知られていない豆知識

ここでは知っておくと「へぇ!そうなの?!」と驚かれることをまとめてみました!

  1. 紹興酒はブレンド酒
  2. 日本酒と作り方が似ているのになぜ色が違うの?

5年、8年、10年などの年数は酒蔵独自のブレンドによって決まる

紹興酒は日本酒でいえば古酒にあたる熟成酒です。日本で流通しているものは3年物以上。その年数については、ブレンド後のものであることもまたあまり知られていません。

10年物であれば、10年ものを主のお酒として規定の割合以上を使用。その他の配合は各酒蔵の独自の算出法によって決められています。このブレンドが紹興酒の味を決める重要なひとつの工程にもなっています。

ブレンドしてるなんて邪道だ!と思われる方もいるかもしれません。ただ、ブレンドといえばウイスキーが最たるものでしょう。日本酒の古酒も、紹興酒同様のブレンドをします。酒造りにおいて、ブレンドも認められた手法のひとつといえるでしょう。

 

紹興酒ってなぜ褐色なの?

紹興酒と日本酒は共通点がとても多いお酒です。それなのに紹興酒は透明ではなく、褐色です。それには理由があります。

紹興酒は日本酒の何倍もアミノ酸が含まれていると言われています。アミノ酸が多いとどうなるか。甕で貯蔵する間に、糖分との化学反応を起こしてメラノイジンを生成し(メイラード反応)褐色へと変わっていくのです。また、甕の鉄分が溶け出してより濃くなっていく、とも言われています。

 

いろいろある!紹興酒のおすすめの飲み方

紹興酒は他のお酒と違って、さまざまな飲み方で楽しまれているお酒です。どのように飲むのが定番で、どのような飲み方がおすすめなのでしょうか?

①常温


紹興酒は他のお酒と比較して香り、味の複雑さは群を抜いています。冷やしたりロックにしたりすると飲みやすくなるため、そうする人が多いかもしれませんが、お酒の素の姿を楽しむのは常温が一番です。

②熱燗


中国でも紹興酒を燗で楽しむ文化はあるようで、むしろ「中国が先だ!」という現地の声もあるぐらいです。温めるときは、熱くしすぎない方がいいでしょう。ただでさえ強い酸がさらに強烈に際立ちます。それでも熱々がいい!という人は熱々でお楽しみください。酒は結局、個人の好みです。

③冷酒


冷やすことでシャープな味わいとなり、飲みやすくなる紹興酒が多くなります。ちょっとヘビーだな、飲みづらいな、と感じたときはボトルごと冷やしてみてください。

④ロック


冷酒同様の効果が得られますが、結局は氷なので、多少薄く感じますし、時間が経つほどそれは顕著に表れていきます。ただ、特徴によってはロックにして化けるお酒もあります。これがお酒の面白いところですね!!!

⑤加える

紹興酒に干し梅、生姜、レモン、ザラメなどさまざまなものを入れて楽しむ方法もあります。こちらは別途、いろいろと試したものをアップします。

⑥割る

ソーダ割り、コーラやジンジャエール割りなど紹興酒を割って楽しみます。こちらもいろいろと試したものを別途アップします。

紹興酒にザラメは正しい飲み方?元中国酒専門店店長が考えてみた結論。

 

紹興酒に合う料理とは?

中華料理といえば紹興酒でしょう!とひとくちにいっても中華料理は地域によって国が変わるほどバリエーションが豊富です。紹興酒の風味の特徴から、どんな料理が合うか紹介します。

 

酸味があって甘・旨の強いお酒。だからこんな味の料理と合う!

紹興酒は全体的に味が濃厚で強めのお酒なので、こんな味わいのものが合うと思います。

  • 濃厚な味付け全般
  • クリーミィな味わい
  • 鴨、羊やヤギなど少し癖のある肉

・・・etc

それぞれ詳しくまとめていきます。

 

①スパイスの効いた料理

香辛料の味や香りと紹興酒の多彩な風味は、他ジャンルにはないマリアージュを生みます。以前、南インド料理のイベントへ行った際に紹興酒を別途で注文させてもらったことがあります。相性が抜群でした。また、中華料理店だけでなく、タイ料理屋などにいくとたまに紹興酒を見かけます。中華のみならず、他アジアの料理全般でも楽しめる可能性を秘めています。

 

②発酵料理

発酵食材を用いた料理はとても相性がよいです。紹興酒もいわば発酵が生んだ産物。発酵同士、どこか懐かしく舌に馴染むようなマリアージュを楽しませてくれるはずです。

 

③肉料理

焼き肉、焼鳥など幅広く合います。紹興酒の深く個性的な味わいは肉のジューシーさを見事に包んでくれます。個人的には、鴨や羊、ヤギなどややクセのある風味と合わせるのが好きです。

 

④定番の中華料理

麻婆豆腐、餃子、チンジャオロースーなど日本でお馴染みの中華料理ももちろん合います!中華料理は料理酒として紹興酒を使っているものがほとんどなので、合わないわけでないというのが自論です。シュワっとしたくなったときは、割ってハイボール風にするのもよいですね。

中国酒はまだマリアージュやペアリングという楽しみ方が成熟の段階まで進んでいません。まだまだこれからこのお酒の楽しみ方は発掘していける余白の多い分野であります。

 

これを知ってたら中国人もびっくり!?紹興酒の分類とは?

紹興酒は「原料・製法」と「糖分含有量」によって分類されます。

日本に広まっているタイプはほぼひとつなので、この分類を知ることはそれほど重要ではありません。ただ、さまざまな種類があるということだけでも知っておくと、このお酒の世界の深さに触れることができ、より楽しめるはずです。

 

原料・製法による分類

「元紅酒」「加飯酒」「善醸酒」「香雪酒」の4つに分類されます。それぞれ何が違うのかというと、用いる原料やその量、仕込み水の違いや発酵期間などです。詳細はまた別ページで詳しく書きます。

日本で流通しているのは「加飯酒」といいます。中国でもこれが一般的ですが、各酒で特徴や個性がバラバラです。以前は日本でもそれぞれ流通していたようですが根付かずに撤退した模様。これはとてももったいないことです。今は昔よりもさまざまな国の文化が受け入れられる土壌が日本にはあります。各酒の個性をしっかり伝えて、プロモーションしていけば紹興酒の他のタイプにも可能性はあるはずです。

 

糖分含有量

「干型」「半干型」「半甜型」「甜型」の4つに分類されます。これは、簡単にいえば「甘さの度合い」でタイプが分類できるということです。

もっともドライタイプが「干型」です。そしてもっとも濃厚で甘味のあるタイプが「甜型」。

ちなみに日本や中国で最も流通している加飯酒は「半干型」。他の黄酒も「半干型」が多いですね。ただ、日本人好みの味としては意外と「半甜型」が好まれると実感しています。「甜型」は本当に甘いので、デザートのシロップやカクテルのリキュールとして使うのが適切です。

こちらも糖分の具体的な含有量など詳細についてはまた別途まとめます。ここでは、こういう分類があるということだけ知っておいて頂ければ十分な一歩です。

 

この文献から学びました!紹興酒関連の書籍

黄酒関連の書籍は日本にとても少ないです。なかなか根付いていかないのは情報の少なさもひとつの理由だと思います。製法や原料について科学的な観点も含めてより詳しい情報が欲しいものです。そんな中で、詳細に情報が掲載されている書籍を紹介します!

僕自身、いまだに読み返します。中国酒を知りたいのなら、ぜひ持っていたい本ですね!

黄土に生まれた酒―中国酒、その技術と歴史 (東方選書)

日本にある黄酒書籍としては情報量は最高級だと思います。科学的な観点から、日本酒などと比較しながら紹興酒の成分の話も出てきているのがとても面白いです。

既に絶版となっているので中古で購入するしかないかなと思います。もし見かけたら中国酒ファンであれば即買いです。高いときは5000円ぐらいの値段がついています。

 

中国の酒 (柴田書店)

1974年に作られた昔の本ですが、紹興酒の詳しい製法や歴史を知ることができます。文字も大きめで黄土に生まれた酒よりはこちらの方が読みやすい印象。こちらも絶版で、中古でのみ入手可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?中国酒は情報源によって定義が異なったりして正直曖昧な部分もあります。訂正できる部分があれば訂正していき、少しずつ精度を高めていきます。

この”雑さ”もまた中国酒の面白さです。ただ、定義を明確にして共有していくこともまた、紹興酒ひいては黄酒文化の発展に繋がっていきます。このあたりも、事実を明確にし、まとめていきたいです。

難しいこと考えず、とにかく紹興酒楽しみたい!という方は、ひとり中華できるお店を記録しているのでよかったらご覧頂いて、直接お店でお楽しみください!

【まとめ】東京23区内で”紹興酒ひとり晩酌”できそうな中華料理店