干杯!
中国酒探究家のdonです。
紹興酒は、中国酒の中で一つのジャンルと思われがちですが、実は特定地域の地酒です。
今回は、地理的表示制度について解説しながら、紹興酒や他のお酒との関連性についてまとめます。
執筆者紹介 don(門倉郷史)
日本初の中国酒ガイドブック「黄酒入門」著者。赤坂・六本木・銀座にある中国郷土料理店で約9年勤務し、黄酒専門店責任者も兼任。2020年に独立し現在は黄酒専門WEB「八-Hachi-」やYouTubeなどで中国酒情報を発信中。代々木上原の中華料理店にも在籍。
Contents
GI(地理的表示保護制度)と紹興酒について
紹興酒は中国における「GI(地理的表示保護制度)」によって認定された品質の高い黄酒(中国地酒)です。
※GIとは
「地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」です。」(農林水産省HPより抜粋)引用:「地理的表示(GI)保護制度」農林水産省
ワインで言う「原産地呼称」と同じで、紹興酒の「紹興」とは地名です。シャンパンやボルドー、ブルゴーニュと同じ位置づけのお酒といえます。
日本ではよく「紹興酒は紹興で造られたお酒」と言われていますが厳密にいえばそれは間違いです。なぜなら、紹興酒を名乗るためには、産地の他にも国家が定めた基準を全て満たさなければならないからです。
原料に用いるもち米や小麦、水など基準が設けられています。ワインでいうシャンパン、メスカルでいうテキーラのようにきっちりとした基準を越えて初めて名乗ることが許される一級品の地酒なのです。
紹興で造られる黄酒でも紹興酒とはいえないものがあります。紹興で造られる=紹興酒、ではありません。これは細かいようですが、紹興酒は上質なお酒である、という認識を持って頂くためにはとても大事なことです。
世界にたくさんある!紹興酒と同じ原産地呼称のお酒
紹興酒同様に原産地をお酒の名称として記載できるものは世界、そして日本にもたくさんあります。ほんの一部ですがこちらにいくつか挙げてみます。
シャンパン
フランスのシャンパーニュ地方でAOC法で定められた条件を満たしたスパークリングワイン。
テキーラ
メキシコのハリスコ州グアダラハラ市近郊にある「テキーラ」で作られる蒸留酒。主原料はリュウゼツランの一種であるブルーアガベ。
「テキーラとは?」日本テキーラ協会
壱岐焼酎(いきしょうちゅう)
麦焼酎の元祖とも言われる、長崎県壱岐市で造られる焼酎。現存する壱岐焼酎の蔵元は7蔵だという。
GI灘五郷(ジーアイなだごごう)
兵庫県の西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷の総称「灘五郷」を産地とした日本酒。“味わいの要素の調和がとれ、後味の切れの良い酒質”を特徴としている。
「GI灘五郷」灘五郷酒造組合
実は「日本酒」も地理的表示で認定されているお酒なのを初めて知りました!
今やジャンルの名称と思われている点で、紹興酒と日本酒はまさに同じですね。共通項が多くてより親近感が湧いてきます。
もっと胸を張っていい!品質が認められている紹興酒
日本でも名前は知られている紹興酒。実は世界の名だたるお酒同様、しっかりと品質が認められているお酒だということはおわかり頂けたかと思います。
東京だと上野や池袋の中華食材店でよく見かけます。15年ものが数百円で売られていたりするのを見ると、もっと適切な価格で販売すればいいのにな・・・と元黄酒屋としては寂しくなります。
家飲みがされない紹興酒を始めとした黄酒が、市場の原理によって価格が下落していくのは仕方のないことかもしれません。でも、この黄酒の価値、魅力をしっかり深堀していき、正確に認知してもらえばその価値も自ずと上がっていくはずです。もっと生産・販売側も胸を張って製造・流通してほしいと願うばかりです。
紹興酒について重要ポイントをまとめています。紹興酒について知りたい方はこちらをご参照ください!