干杯!紹興酒担当のdonです。
「紹興酒ってどんなお酒なの?」
紹興酒の名前は知っているけど、原料や製法など意外と知らない!という方は多いのではないでしょうか?
今回は「紹興酒について詳しく知りたい!」という方に向けて基礎知識を詳しく解説します。
- 紹興酒の基礎知識(定義 / 原料 / 作り方 / 歴史)
- 紹興酒をより楽しむための方法
- 初めて飲む方におすすめの紹興酒3選
この記事は、紹興酒について随時更新していく進化型記事です。
もし不足している情報があれば、遠慮なくコメントを頂けたら幸いです。一緒に紹興酒について深堀していきましょう!
中華郷土料理店に10年勤務。日本唯一の黄酒専門店を4年運営。紹興酒の酒蔵へ現地訪問したり、中国酒関連の書籍を読み情報を収集。中国酒専門blog「八-Hachi-」やYouTube「毎天干杯!」で中国酒情報を発信している。
そもそも紹興酒とは?

中華料理店でお馴染みの紹興酒。
紹興酒とは、浙江省紹興市で作られる黄酒の一種で、糯米や麦曲などを原料とした醸造酒です。
まずは最初に紹興酒の定義や原料など基礎的なことについて紹介していきます。
定義 | 紹興市産かつ国家基準を満たした酒
紹興酒の原料や製法は、国によって定められた基準があります。その基準をクリアしなければ紹興酒としては認められません。
どのような国家基準があるかというと、下記の通りです。
- 糯米はGB(日本のJISに相当する機関)で規定されている二等級以上のものを使用
- 麦曲(麹)に使用する麦はGBで規定されている二等級以上のものを使用
- 紹興市内を流れる水流「鉴湖(かんこ)」の上質な水を使用
- 紹興市で生産された醸造酒
・・・etc
要注意!「紹興市で造られているから紹興酒」は間違い!

紹興酒の産地とは、その名の通り「紹興市」です。
紹興市がどこにあるかというと、上海の南西に「浙江省(せっこうしょう)」という省があります。浙江省の中では北部にあたり、”東洋のベネチア”と呼ばれている水源豊かな街、それが「紹興市」です。
この浙江省紹興市こそが、まさに紹興酒が誕生した場所です。
ここでよく勘違いされてしまうのですが、「紹興で作っている醸造酒=紹興酒」というと、説明が足りません。
紹興市で造っているお酒でも、上記の国家基準をクリアしていなければ紹興酒と名乗ることができないのです。
本物の紹興酒には正式なシールが貼られている
国が認めた正式な紹興酒には、下の写真のようなシールが箱やボトルのどこかに貼られています。

これは国家基準を満たした「国家地理表示保護」を表すマークです。このマークがついていないものは、紹興産だとしても紹興酒と呼ぶことはできません。
まさに、シャンパーニュ地方の「シャンパン」や、テキーラ地方のメスカル「テキーラ」と同じような考え方です(原産地呼称)。
原産地呼称について、さらに詳しいことは下記の記事で解説しているので、良かったらご参考にどうぞ!
▶︎紹興酒はシャンパンやテキーラと一緒?”原産地呼称”認定のお酒と比較
「紹興産だから紹興酒」と定義してしまうと、紹興産かつ基準に満たないものも紹興酒として認めることになります。
紹興酒はさまざまな国家基準をクリアした上質なブランド酒なのです。
原料 | 糯米や麦曲などから造られる紹興酒

さてそんな紹興酒とは、どんな原料からできているのでしょうか?
紹興酒は、私たちの身近にある日本酒と同じ米のお酒です。さらに水や麹、酵母を使用します。
確かにその通り。
ではなぜ日本酒と同じ米の酒なのに違う風味になるのでしょうか?
紹興酒の原料と、製法について紹介していきます。
原料の水・糯米・麦曲・酒薬・カラメルについて

紹興酒の主な原料は、もち米、麦曲、鉴湖(かんこ)の水、酒薬(しゅやく)です。また、着色のために、カラメルも使用します。紹興酒で使用する原料は、等級の基準がしっかり定められています。
ちなみに「曲(きょく)」というのは、日本でいえば麹(こうじ)です。お米の酒造りには糖化発酵材として必需品。
そして水は、酒造りに最も適していると言われている鉴湖(かんこ)という湖の水を使用しなければなりません。鉴湖はかつては一つの大きな湖を指していましたが、今は会稽山から注ぐ36の水流の総称です。
より詳しく知りたい方は、こちらに紹興酒の原料についてまとめているので良かったら参考にしてみてください。

もち米をお酒にするためには、糖分が足りないため、麹を使って糖分を生み出していく必要があります。麹は、お米のでん粉をグルコース(糖分)に変えていきます。その後、酵母がその糖をアルコールに変換させていくのです。お米から造るお酒にとって、麹や酵母は無くてはならない存在なのです。
作り方 | 並行複発酵で造られる紹興酒

紹興酒の作り方は日本酒と似ていて、糖化発酵とアルコール発酵を同じ甕の中で行っていく「並行複発酵」で造られます。
細かな技術を用いながら、長期にわたる発酵・熟成期間を経て、紹興酒は誕生します。
紹興酒の製造工程とは?
紹興酒の製造の流れを簡単に解説すると、下記のようになります。
- 糯米を洗米する
- 糯米を精米する
- 糯米を水に浸す
- 糯米を蒸す
- 糯米を冷ます
- 甕の中で麹を入れて発酵させる
- 搾って濾過をする
- 80〜90度で加熱殺菌
- 大甕で貯蔵する
- ブレンドし、完成
正統な紹興酒は、冬季に醸造します。11月になると紹興酒の仕込みがスタートし、上記のような流れで造られていきます。
新酒ができあがるのは2月頃。3〜4ヶ月かけてじっくり造り上げられた紹興酒はそこから長期熟成期間に入ります。
紹興酒はどこか安価な印象を持たれがちなのですが、高度な技術「並行複発酵」の製法を用いながら手間を惜しまずに長期に渡って造られています。
歴史 | 現代紹興酒のルーツは約1000年前に完成したもの

紹興酒の誕生を遡ると、今から約2400年程前の春秋戦国時代を記した書物「呂氏春秋」の記載に辿り着きます。
そこには、越王である勾践(こうせん)が住む会稽(かいけい※現在の紹興)にて川から酒を流し、それを飲んで兵士たちが鼓舞した、というような表記があります。
日本でいえばまだ縄文時代にあたるこの時期。既に飲用のお酒があったことだけでも、驚くべき文化の発達スピードです。
ただ、今の紹興酒の原型ともいえるお酒は、紹興で酒造りが最も隆盛した南宋時代のものです。
南宋時代は、今から約1000年ほど前です。小麦を使った麹の製法が紹興に伝わり、酒造りにも反映されました。現代の紹興酒は、この頃の製法で造られていると言われています。
- 紹興酒の歴史は2400年前の「呂氏春秋」から始まる
- 今の紹興酒は約1000年前の南宋時代に生み出されたお酒が原型
味わい | 紹興酒を構成する”六味”とは?
紹興酒は他の酒と比較して香味成分が豊富で多彩な味わいが感じられます。
そんな紹興酒の味わいは、6つの味のバランスで成り立っているのです。
「甜・酸・苦・辣・鮮・渋」について紹介!
紹興酒を構成する6つの味とは、下記の通りです。
- 甜味(あまみ)
- 酸味(さんみ)
- 苦味(にがみ)
- 辣味(からみ)
- 鮮味(うまみ)
- 渋味(しぶみ)
それぞれの味がバランスが絶妙に合わさってこそ、上質な紹興酒と言えます。
逆を言えば、このどれもが欠けてはならない要素です。
六味についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▶︎紹興酒の味わいを表す<六味>を学んでさらに紹興酒を楽しもう!
紹興酒のおすすめの飲み方や合う料理とは?
紹興酒はさまざまな飲み方で楽しまれています。また、合わせられる料理も幅広く、多彩なペアリングが可能です。
というわけで、紹興酒おすすめの飲み方やおつまみについてまとめました。

紹興酒のおすすめな飲み方とは

さて、紹興酒にはどんな飲み方があるのでしょうか?
一般的な方法を一覧にしました。ぜひ参考にしてみてください。
①常温 | 最もオーソドックスな飲み方。紹興酒本来の味が楽しめる。 |
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②燗 | 湯煎やレンジなどでボトルや徳利を温めて飲む方法です。紹興酒は酸味が強いお酒なので温めすぎないようにするのがおすすめです。 |
③冷酒 | 冷蔵庫でボトルごと冷やすと、渋味や酸味がシャープになり、銘柄によっては非常に飲みやすくなります。 |
④ロック | 常温の紹興酒に氷を入れて楽しむ飲み方です。飲み口が柔らかくなりますが、味が薄まってしまうのが難点です。 |
⑤加える(干し梅や生姜など) | 常温の紹興酒に干し梅を入れたり、レモンスライスを入れる飲み方もあります。ザラメを入れるときは燗にして混ぜるようにして溶かしていくのが一般的です。 |
⑥割る | チューハイの焼酎のように紹興酒を活用する飲み方です。ソーダやジンジャエール、コーラなど割るドリンクによってさまざまな味わいが楽しめます。 |
紹興酒の飲み方についてより詳しく知りたい方は、こちらをご参考ください。

紹興酒にぴったり!おすすめのおつまみ・料理

「紹興酒に何を合わせていいのかわからない」という方も少なくありません。
紹興酒は独特な酸味や強めのボディで、中華だけではなく、肉料理や発酵食品など幅広い料理と楽しむことができます。
ご参考までに紹興酒に合うと思う料理・食材をまとめました。
肉料理全般 | 焼き肉、焼鳥、すき焼き、角煮やチャーシューなどの肉料理は紹興酒と合います。パンチェッタもいいですよ!鴨や羊、ヤギなどやや個性のあるお肉を使った料理も相性が良いですね。 |
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発酵食品・料理 | チーズや腐乳(中国の発酵豆腐)などの発酵食品も、立派な紹興酒のおつまみになります。 |
スパイス料理 | 最近流行のスパイス料理。香辛料の味や香りと紹興酒の多彩な風味は、他ジャンルにはないマリアージュを生みます。 |
和食 | 意外と思われるかもしれませんが、和食にも紹興酒とピッタリな料理があります。肉じゃがやおでんなど、ふくよかな味わいだったり、出汁がしっかり利いた料理だと、紹興酒とうまく混じり合って、良い晩酌のひとときが過ごせるでしょう。 |
定番!中華料理 | 麻婆豆腐、餃子、エビチリなど日本でお馴染みの中華料理は紹興酒との相性もぴったりだと思います。シュワっとしたくなったときは、炭酸で割ってハイボールにするのもよいですね! |
不定期ですが紹興酒おつまみを作ってアップしております。簡単にできる「下酒菜」!ご参考になれば幸いです。

紹興酒ってどこで買える?
紹興酒の購入場所として一番手軽なのは、Amazonや楽天などインターネット通販サイトです。
スーパーやコンビニは、紹興酒をほとんど置いていません。あっても1種。2種以上あれば「品揃えがいいな」と感じるぐらいです。ちょっと寂しい現実・・・。
個人的には中華食材店での購入がおすすめです。
上野のアメ横には巨大な中華食材店があります。そのお店は、中国酒の品揃えが良く、たまに見たことがない紹興酒を置いたりするので、よく見に行っています。
その他、新大久保や池袋にも中華食材店がいくつかあります。
- 新大久保や上野にあるような中華食材店
- インターネット
- 酒販店
- スーパー・コンビニ
意外と知らない!紹興酒の面白いトリビア2選

謎の多い紹興酒ですが、「へぇ!そうなんだ!」と思えるようなトリビアを二点ピックアップしてみました!
紹興酒は、なぜ褐色なのか?
紹興酒と日本酒の製法は似ていて、それぞれ米の酒。なのにどうして色がこんなにも違うのでしょうか?
答えはアミノ酸の量とカラメルにあります。
紹興酒は、アミノ酸が日本酒の数倍以上も含まれています。原料に使うもち米は、うるち米よりもたんぱく質が豊富です。そのたんぱく質はアミノ酸の源でもあります。
紹興酒は精米歩合が低く、たんぱく質が残っている状態で酒造りが進んでいきます。以上のことから、紹興酒はアミノ酸が豊富なのです。
これは、発酵や熟成の過程で、糖分と化学反応を起こし、メラノイジンという褐色物質が作られていき、酒色が変わっていきます。
さらに着色用にカラメルを使用するため、褐色になります。

- アミノ酸が豊富で、メイラード反応がより促進する
- 甕熟成で鉄分が溶け出していく
- カラメルの使用
紹興酒はウイスキーのようにブレンドをして完成するお酒
紹興酒は、日本酒でいえば古酒にあたる熟成酒です。お店のメニューには、「3年」「5年」「10年」など年数が記載されているのをよく見かけます。
この紹興酒の年数ですが、単純に寝かせた年数ではなく、ブレンド後の年数がつけられています。
例えば10年物であれば、10年物を主のお酒として規定の割合(50%)以上を使用。残りの配合の割合は、平均値が10年になるよう、各酒蔵の独自の算出法によって決められるのです。
このブレンドは、紹興酒の味を決める重要なひとつの工程になっています。

「ブレンドしてるなんて邪道だ!」と思われる方もいるかもしれません。ただ、ブレンドしているお酒といえば、ウイスキーが最たるものでしょう。
日本酒の古酒も、紹興酒同様のブレンドをします。お酒造りにおいて、ブレンドは、認められた手法のひとつといえるでしょう。
ただ、最近ではブレンドをしていない紹興酒も流通してきていますので、今後大きく変わっていくかもしれません。
初心者におすすめ!紹興酒銘柄3選
最後に八-Hachi-が紹興酒初心者の方におすすめしたい飲みやすい紹興酒を3本紹介します。
紹興酒選びにぜひご参考ください!
おすすめ❶「東方特雕」(ドンファン)

一般的な紹興酒とは一線を画す味わい。フルーティで雑味がありません。すっと口に入って広がる酸味。甘味や旨味がその酸をいい具合にサポートしています。
個人的には12年が一番おすすめですが、8年、10年でも十分美味しいです!価格も俄然安いので、日頃飲むようなら、8年か10年をおすすめします。
おすすめ❷「玉酔美液」(ユーズイ)

個人的には初めての方にこの紹興酒が一番おすすめです。
完熟した蜜柑を食べているかのような爽やかな甘口タイプ。しつこくなくて、軽やか。「紹興酒ってキツイ味」と思っている方にこそぜひ飲んでみていただきたい!
これは、「善醸酒」(ぜんじょうしゅ)というタイプの紹興酒です。仕込み水に紹興酒を使うことで濃厚な味わいになります。
ネックは、上野の地下中華街でしか入手できない、という点ですね・・・惜しい・・・。

おすすめ❸「三国演義10年」

この紹興酒はご存知の方が多いかもしれませんね。多くの中華料理店で取り扱われています。
味わいは、軽やかな酸味と優しい甘旨が良いバランスで折り合っていて、非常に飲みやすいです。日本酒通の方が「日本酒みたいで美味しい!」とおっしゃっていました。
まとめ
紹興酒について、定義や製造法、原料など基本的な知識を詳しくまとめました。
紹興酒は米や麹を原料として、じっくり手間暇かけて作られる歴史ある銘酒です。
また情報が入り次第、アップしていきます。「もっとこんなことが知りたい!」などあれば、コメントやメッセージをいただければお調べしますのでお気軽にお声がけください!