干杯!donです。
今回は、「黄酒(ファンジョウ)」がどんなお酒なのかをわかりやすくまとめます。
日本では聞きなれないジャンルでもある、黄酒。実は広大な中国において、さまざまな地域で造られている醸造酒です。
ここでは、黄酒の概要と各地域の特徴や代表銘柄などを解説していきます。
執筆者紹介 don
中華業界歴10年。黄酒専門店初代仙長。紹興酒や地方黄酒酒蔵へ現地訪問したり、中国から紹興酒関連の書籍を取り寄せて情報を収集。現在はWEBやYouTubeなどで中国酒情報を発信中。代々木上原「Matsushima」に在籍。
Contents
黄酒とは?
黄酒とは、もち米やキビなどの穀物を原料とした中国最古と言われている醸造酒です。
その歴史は7000年とも9000年とも言われています。
黄酒は中国各地で製造されていますが、基本的に地元で親しまれていることが多く、日本国内にそれほど流通していません。そのため、認知度があまり高くないのが現状です。
しかし、黄酒は同じ醸造酒である日本酒やワインと比べて勝るとも劣らないバリエーションの豊かさがあり、非常に面白い酒です。
色だけ見ても、こんなにも違います。

当然、味わいや香りも異なります。
ひとつのジャンルにおいて、なぜここまでの違いが見られるのか?
その理由のひとつは、原料にあります。
黄酒の原料とは?

黄酒の原料は産地や銘柄によってさまざまですが、主に穀物・水・曲(きょく)です。
それぞれ解説します。
穀物
穀物とは、具体的には主に米・麦・黍(きび)などです。その中でも黄酒によく使われる原料は糯米ですが、何を用いるかは酒蔵や地域によって異なります。
日本酒やワインなど他の醸造酒の原料を見てみると、品種は豊富にあるものの、大きな枠としては「米」「ぶどう」などと限定的です。
しかし、黄酒は「穀物」と幅広い枠組みであることも特徴のひとつと言えるでしょう。
日本酒 | 米 |
---|---|
ワイン | ブドウ |
ビール | 大麦 |
黄酒 | 穀物(米・麦・粟・黍など) |
曲(麹)
曲(きょく)とは、穀物に菌を繁殖させた糖化発酵剤です。
日本酒でいう麹と同じような役割を果たしますので、曲が無ければ黄酒を造ることはできないというほど、非常に重要な原料です。
黄酒の曲は、主に麦曲が多く使われます。繁殖する主な菌はクモノスカビで、フマル酸という独特な酸を生成すると言われています。
南方では紅曲が使用されたり、薬材を混ぜた薬曲を用いるなど、これもエリアによって一部違った特色が見られる場合もあります。
水
水は酒にとってまさに源といってもよいでしょう。
ただ、黄酒のラベルを見てみると「水」としか書いていないものが多く、詳細な情報が見当たりません。
実際には、醸造用の水として塩分量や鉄分などにおいてさまざまな規定が定められており、一定の基準を越えていなければなりません。
なお、最も有名な黄酒である紹興酒は「鉴湖(鑑湖)」という湖の水を使わなければならないという地域限定の規定もあります。
黄酒の造り方

黄酒は日本酒と同じ並行複発酵で造られる醸造酒です。
産地や種類によって違いはあるため、ここでは黄酒で最も有名な紹興酒を例に挙げて紹介します。
※超簡易版です。順次詳細な情報を追記していきます。
紹興酒の製造工程
- 糯米の殻などを取り除く
- 糯米を水に浸す
- 糯米を蒸す
- 糯米を冷ます
- 甕の中で麹を入れて発酵させる
- 搾って濾過をする
- 80〜90度で加熱殺菌
- 大甕で貯蔵する
- ブレンドし、完成
なお、紹興酒について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

黄酒の特徴を解説!3つの地域に分類

黄酒は特徴によって大きく3つのエリアに分類することができます。
北方派(ほっぽうは)
山東省や陝西省など中国北部エリアの一部で、黄酒が造られています。
北方黄酒の特徴は個性的な黄酒が多いということ。その理由は、黍米(キビ)や黒米を使用するなど主原料がさまざま異なるためです。
北方派黄酒の特徴
- 産地:山東省、内蒙古、陝西省など
- 原料:黍や黒米などさまざま
- 味わい:独特で紹興酒とは一線を画す
- 代表銘柄:即墨老酒(ジーモウラオジョウ)
代表銘柄である即墨老酒とは、黍を大鍋でドロドロになるまで炒め煮込み、その焙煎の香りがお酒の味わいとしてダイレクトに表れる唯一無二な黄酒。

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江南派(こうなんは)
浙江省や上海周辺エリアは最も黄酒が造られている名産地域です。
代表的な黄酒「紹興酒」と同様に、糯米を麦曲で醸していく製法が主流です。
江南派黄酒の特徴
- 産地:浙江省、上海、江蘇省など
- 原料:糯米・麦曲が主流
- 味わい:紹興酒系の風味が多い
- 代表銘柄:古越龍山、石庫門
紹興酒最大手の古越龍山(こえつりゅうざん)は、日本でも数多く流通している業界のリーディングカンパニー。
もう一つ挙げた「石庫門(シークーメン)」は、上海で唯一の黄酒メーカー「上海金枫酒股份有限公司」の代表ブランド。紹興酒のような味わいもありながら、軽やかで紅茶のようなフローラル感が個性を感じさせてくれます。

南方派(なんぽうは)
福建省や広東など、中国沿岸部南方にも盛んに黄酒を製造しているエリアがあります。
福建省の「沉缸酒(チェンガンジョウ)」は、全国評酒会で3度金賞を受賞し、「黄酒之冠」と評された実績ナンバーワンの黄酒です。
南方の黄酒は糯米を使用しながら紅曲を中心としてさまざまな麹を使用するのが特徴。温暖な気候の中、腐敗を防ぐために糖度を高める傾向があり、甘口タイプの黄酒が多く存在しています。
南方派黄酒の特徴
- 産地:福建省、広東省など
- 原料:糯米・麦曲が主流
- 味わい:濃醇で甘口タイプが多い
- 代表銘柄:沉缸酒
沉缸酒(チェンガン)は、紅曲と、漢方をいくつも混ぜ合わせて作られた「薬曲」を使用し、まろやかで優しい甘味と、鼻を抜けていく独特な後味が特徴。
※下の「おすすめ銘柄」でも紹介しております。
黄酒入門!おすすめ銘柄3選
さて最後に、初めての黄酒におすすめな銘柄を3つ選びました。ご参考になれば幸いです。
北方黄酒 | 黒米(ヘイミー)

中国北方にある黄酒名産地「陝西省洋県」。国家が保護する自然特区で育まれた一級品の黒米を使用した軽やかな風味が特徴の黄酒です。
- 原料:黒米,麦曲
- 度数:12度
- 型:半干型
- 産地:陝西省洋県
江南黄酒 | 東湖12年(ドンフー)

東湖は紹興市にある湖の名称で、その名を冠した紹興酒です。
東湖は、他の紹興酒とは明らかに異なる風味を持っています。ふわっと香るの果実香。爽やかで熟したような柑橘系。飲んでも軽やかで酸・甘・旨のバランスが絶妙!
- 原料:糯米,麦曲
- 度数:14度
- 型:半干型
- 産地:浙江省紹興市
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南方黄酒 | 缸缸好(ガンガンハオ)

上で紹介した沉缸酒(チェンガンジョウ)の現代版タイプ。すっきりと飲みやすく改良されており、日本人にも親しみやすい丸みな味わいのする黄酒です。
- 原料:糯米,紅曲,薬曲
- 度数:14度
- 型:半甜型
- 産地:福建省龍岩
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まとめ
黄酒がどのようなお酒なのか、おわかりいただけたでしょうか?
黄酒は輸入している会社が1社しかなく、日本に流通している銘柄はかなり限られます。飲み方や楽しみ方、ペアリングなどまだまだ未開拓の分野なのでポテンシャルがあり、今後が楽しみなお酒といえます。
疑問点や「こんな黄酒見つけました!」などあればいつでも気軽にご連絡ください!