紹興酒入門

紹興酒に種類がある?加飯酒や善醸酒など各タイプを徹底紹介!

製法と糖分量で4つに分類!紹興酒の種類について解説【プロ向】

干杯!紹興酒担当のdonです。

「紹興酒って、いろんな種類があるって本当?」

紹興酒は日本で流通しているのは大体が「加飯酒(かはんしゅ)」というタイプですが、実は他にもさまざまな種類が存在します。

そこで今回は紹興酒の種類・分類について解説します。

don
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この記事を読めばいろいろな紹興酒のタイプについて知ることができるでしょう。
こんなことが学べます
  • 加飯酒以外の紹興酒が知りたい
  • そもそも加飯酒って何?
  • 紹興酒ってどんなお酒なのか詳しく知りたい
  • 飲食店や酒販店で働いていて紹興酒を学びたい
執筆者紹介 don

中華郷土料理店に10年勤務。日本唯一の黄酒専門店を4年運営。紹興酒の酒蔵へ現地訪問したり、中国酒関連の書籍を読み情報を収集。中国酒専門blog「八-Hachi-」やYouTube「毎天干杯!」で中国酒情報を発信している。

4種類に分類できる!紹興酒の種類について詳しく解説します。

4種類に分類できる!紹興酒の種類について詳しく解説します。

紹興酒の種類は、二つの分類方法があります。それは、「製造法」と「糖分量」です。

まだ少しわかりづらいかもしれませんが、概要を下記の表にまとめてみました。

製造法 紹興酒は製造法の違いによって4種類に分類されます。日本に流通しているのはほぼ加飯酒のみ。かつては輸入があったようですが残念ながら姿を消してしまいました。この分類を知ることで、紹興酒にもさまざまな個性を持った酒があるのだと知ることができます。
糖分含有量 紹興酒は糖分量によって4種類に分類されます。これは、紹興酒だけではなく、黄酒全体にも適用されている基準です。この分類を知ることで、甘口なのか辛口なのかを判別することができます。

いかがでしょうか?まだわかりづらいでしょうか?

次に、それぞれの分類方法を詳しく見ていきましょう。

紹興酒の製造法で分類できる4種類

【製造法編】紹興酒の"造り"で分ける4種類(おまけ有)

紹興酒は製法によって4種類に分類することができます。

用いる原料が若干異なっていたり、各分量や発酵期間などが異なります。

その紹興酒4種類をそれぞれ見ていきましょう。

元紅酒(げんこうしゅ)

紹興酒の最もオーソドックスタイプ。ですが、残念ながら日本には流通していません。

以下が元紅酒の特徴と成分基準表です。

元紅酒の特徴
  • 攤飯(タンファン)造り
  • 仕込み水に「漿水(しょうすい)」を使用する
  • 麹に「麦曲」を使用する
  • ドライタイプの紹興酒
元紅酒の成分基準表

糖分 15g未満(1リットル中)
酸度 4.0-7.0g(1リットル中)
アルコール度数 13.0°〜20°
アミノ酸 0.5g以上(1リットル中)

「漿水(しょうすい)」とは、もち米を浸漬した際に発酵した水のことで、仕込みに用います。

「麦曲」とは、中国版の麦麹です。日本の麦麹とは菌が異なりますので混同しないようにしましょう。

紹興酒の原料についての詳しい説明はこちらをご参照ください!

紹興酒の代表的な原料は6つ!糯米や麦曲など中国酒探求家が詳しく解説独特な風味をもつ紹興酒。その個性を形作っている6つの原料「鑑湖水・もち米・麦曲・酒薬・漿水・カラメル」について現役中華料理スタッフが詳しく解説します。...

また、元紅酒を飲んだ時の感想もまとめているのでより詳しく知りたい方は併せてご覧ください!

日本未流通の紹興酒「元紅酒(げんこうしゅ)」を地元紹興人と一緒に試飲してみた。
日本未流通の紹興酒「元紅酒(げんこうしゅ)」を地元紹興人と一緒に試飲してみた。紹興酒は4つのタイプに分類されますが、日本で流通しているのはほぼ「加飯酒」です。今回は非常に珍しい紹興酒のドライタイプ「元紅酒」を、地元が紹興という中国人の方と一緒に試飲してみました。...

加飯酒(かはんしゅ)

日本や中国で最も流通している紹興酒がこの「加飯酒(かはんしゅ)」です。

元紅酒よりも原料を多く使い、発酵期間も長期間に渡ります。味わいや元紅酒よりもふくよかでまろやかではありますが、4種の中では、ややドライタイプに属します。

以下が加飯酒の特徴と成分基準表です。

加飯酒の特徴
  • 製造過程は元紅酒と同じ
  • 元紅酒より糯米・麦麹を10%増加して仕込む
  • 一次発酵、二次発酵共に元紅酒よりも長い
  • ややドライタイプの紹興酒
加飯酒の成分基準表

糖分 15.1〜40.0g未満(1リットル中)
酸度 4.5-7.5g(1リットル中)
アルコール度数 14.0°〜20.0°
アミノ酸 0.6g以上(1リットル中)

厳密に言えば、アルコール度数は年数によっても細かく定められています。

  • 酒齢3年以下 15.5°以上
  • 酒齢3〜5年 15.0°以上
  • 酒齢5年以下 14.0°以上

善醸酒(ぜんじょうしゅ)

黄酒の製造法としては最も古くからあるとも言われているのがこの「善醸酒(ぜんじょうしゅ)」です。

基本的には元紅酒や加飯酒と同じような製造工程ですが、大きな違いがあり、仕込みの水に紹興酒を使用するという点です。

この製法は、アルコール度数の高いお酒を作ることができなかった時代に編み出されたと言われています。

もち米からお酒を作るためには、原料を糖化しなければならず、そのためには麹が必要です。

当時はまだ麹や酵母の力が弱かったため、仕込み水に紹興酒(元紅酒)を使用するという非常に贅沢な紹興酒なのです。

糖分は加飯酒の約4倍(7.18%)であり、甘口ではありますが後味はしつこくなく日本人には親しみやすい味わいといえます。

善醸酒の成分基準表

糖分 40.1〜100.0g未満(1リットル中)
酸度 5.0-8.0g(1リットル中)
アルコール度数 12.0°〜20.0°
アミノ酸 0.5g以上(1リットル中)

香雪酒(こうせつしゅ)

紹興酒の中でも最も甘口タイプなのが「香雪酒(こうせつしゅ)」です。

元紅酒の醪に麦麹と糟焼(ツァオシャオ)を添加して3~4ヶ月保管したあとに搾って完成します。この4種類の中では

糟焼(ツァオシャオ)とは?
「(紹興酒の)酒糟には10%の酒精と20〜25%の可溶性無窒素物(主として糖分)を含んでいるので、これに新しく稲のもみがらを加え、二週間密封して発酵を継続し、これを蒸留して白酒を取り出す。これを俗に糟焼(ツァオシャオ)という。」
引用:「中国の酒」大谷彰著より

香雪酒の成分基準表

糖分 100.0g以上(1リットル中)
酸度 4.0-8.0g(1リットル中)
アルコール度数 15.0°以上
アミノ酸 0.4g以上(1リットル中)

おまけ:淋飯酒(りんぱんしゅ)とは?

紹興酒には「攤飯酒(たんふぁんしゅ)」「淋飯酒(りんぱんしゅ)」という名称もあります。

これは、製法工程の一部である「蒸し米を冷ますときの違い」によるものです。

攤飯酒と淋飯酒
攤飯(たんふぁん):蒸した米を簀子に広げてそのまま冷ます
淋飯(りんぱん):蒸した米に冷水をかけながら冷ます

攤飯をして造る紹興酒が攤飯酒、淋飯をして造る紹興酒を淋飯酒といいます。

淋飯酒は早く簡単に作れることから速醸の酒とも言われています。

今はほとんど飲用としては流通しておらず、元紅酒の酒母として用いられています。かつては酒母で使われる以外の酒は、新酒として楽しむ人もいたようです。

攤飯酒は元紅酒と同義語として使われることもあるのですが、非常にわかりづらい分類ですね。

最後にまとめておきますので、まずはこれだけ覚えておけば良いかと思います。

淋飯酒(りんぱんしゅ)とは?まとめ

淋飯酒とは、元紅酒の酒母である。

紹興酒の糖分量で分類される4種類

【糖分量編】紹興酒の甘・辛口が見分けられる4種類

紹興酒は、糖分含有量によっても4種類に分けることができます。

糖分含有量とは?
1リットル中に糖分量が何g含まれているかの数値。

これは黄酒全体にも適用されている分類で、この指標を見ると「甘口か辛口か」がわかるのです。

しっかりと成分表が貼られた紹興酒だと箱やボトルの裏面に「干甜型」「半干型」などと書かれています。ぜひチェックしてみてください!

では、糖分含有量によって分けられる4種類を見てみましょう。

「干型」(ガンシン)紹興酒でもっともドライタイプ

紹興酒の中で最も辛口なのが「干型」(ガンシン)です。(※以下名称からシンは省略)

糖分含有量は1リットル中で15.0g未満と定められています。

日本ではほとんど流通していません。ちなみに非常にドライな台湾紹興酒はこの「干型」に分類されます。

初めて紹興酒を飲むときに、この干型を選んでしまうと、きついと思います・・・。

「半干型」(バンガン)最も一般的な紹興酒の味

紹興酒の中で最も一般的なのが「半干型(バンガン)」です。

糖分含有量は1リットル中で15.1〜40.0g未満と定められています。

日本で最も見かけることができる紹興酒の型です。

「半甜型」(バンティエン)親しみやすい濃醇でまろやかな紹興酒

やや甘口タイプですが親しみやすい味わいタイプが「半甜型」(バンティエン)です。

糖分含有量は1リットル中で40.1〜100.0g未満と元紅酒の3〜7倍です。

日本で時折見かけることができます。紹興地方以外の黄酒だと「朱鷺黒米酒」「沉缸 缸缸好型」などが挙げられます。

「甜型」(ティエン)ポートワインのような甘口タイプの紹興酒

最も濃厚で甘口タイプなのが「甜型」(ティエン)です。

糖分含有量は1リットル中で100.0g以上です。かなり濃厚ですね。

甜型も日本ではあまり見かけない紹興酒です。紹興地方以外の黄酒だと「沉缸酒伝統型」「客家 純宮」などが挙げられます。

コレで理解!製法別の4種類との関係性

・・・といっても、いろんな分類と名称があって、混乱しますよね。

実は、製法別と糖分量別の紹興酒は、リンクしています!

表にすると非常にわかりやすいです。

糖分量 製法別による名称 糖分含有量による名称
15.0g未満 元紅酒 干型
15.1〜40.0g以下 加飯酒 半干型
40.1〜100.0g以下 善醸酒 半甜型
100.0g以上 香雪酒 甜型

元紅酒は、干型(辛口)であり
加飯酒は、半干型(やや辛口)であり
善醸酒は、半甜型(やや甘口)であり
香雪酒は、甜型(甘口)である

ということですね!

日本で一般的に流通しているのは加飯酒なので、僕たちは紹興酒といえば「やや辛口タイプ」を楽しんでいると言えます。

わかりましたでしょうか?もしよくわからなければ、コメントやメッセージなどお気軽に書き込みをお願いします!

【まとめ】新しい紹興酒の種類が日本に入ってきたら面白い!

【まとめ】新しい紹興酒の種類が日本に入ってきたら面白い!

紹興酒は製法と糖分含有量によって分類でき、それぞれ4つずつの名称があるということを紹介いたしました。

加飯酒以外の種類、飲んでみたくありませんか?

僕は紹興で全ての紹興酒を飲ませていただきましたが、味はどれも異なり、紹興酒ってとても面白いなと思いました!

これから、日本でも流通していくことに期待したいですね。紹興酒の可能性がグッと広がるはずです!

▼▼▼紹興酒全般についてもっと知りたい方はこちらをご参考ください。▼▼▼

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