干杯!中国酒探究家のdonです。
「紹興酒って独特な味がするお酒ですよね。」
紹興酒の味はよく個性的だと言われますが、実は「六味」のバランスが重要とされています。
え・・・?六味って何・・・?
今回はこの六味についての解説を通して、紹興酒の味わいについて紐解いていきます。
執筆者紹介 don(門倉郷史)
日本初の中国酒ガイドブック「黄酒入門」著者。赤坂・六本木・銀座にある中国郷土料理店「黒猫夜」にて約9年勤務し、黄酒専門店責任者も兼任。2020年に独立し現在は黄酒専門WEB「八-Hachi-」やYouTubeなどで中国酒情報を発信中。代々木上原の中華料理店にも在籍。
▼紹興酒全般について知りたい方はこちらをご参照ください!
Contents
紹興酒の味についてどう思われてる?一般的な感想をまとめてみました
紹興酒は他のお酒にはない独特な風味を持っています。
さて、そんな紹興酒の味は、世間一般的にどのように思われているのでしょうか?TwitterなどWEBの感想を見てみると・・・
- レーズンや梅を漬けたような味
- 小籠包と紹興酒の熱燗最高
- 中華には紹興酒がよく合う!
- 古酒みたい
- シェリー(オロロソ)に似てる
・・・etc
- 薄めた醤油みたい
- クセがあってイマイチ
- 養命酒みたいで癖が強い
※養命酒がダメというわけではありません
・・・etc
紹興酒は熟成酒。日本酒では「ひね香」といって劣化の臭いを指す名称があります。少しすえたような香りで、紹興酒にもひね香に近いものを感じる人が多いようです。
さて、そんな紹興酒ですが、6つの味「六味」のバランスが重要とされていることはあまり知られていません。
この六味とは一体何なのでしょうか?
六味とは?紹興酒の味を構成する6要素を解説!
紹興酒は6つの味で構成されているとされています。それを「六味」といいます。
六味とは、以下の6つです。
- 甜(ティエン)
- 酸
- 苦
- 辣
- 鮮
- 渋
「甜」(ティエン)
甘さの度合。紹興酒の甘味は糖分が元で、主な成分としてはブドウ糖やイソマルトース、マルトースなどです。
構成成分
ブドウ糖 | 糖分の中で最も代表的な成分。果実やハチミツなどに含まれる単糖類。 |
---|---|
イソマルトース | 甘味成分のひとつ。酒やハチミツに含まれる |
マルトース | 別名麦芽糖。キャンディー、アイスクリームなど菓子類や、佃煮など食品の甘味料として用いられる |
「酸」(スワン)
すっぱさの度合。紹興酒の酸は乳酸、酢酸を主として、次にピログルタミン酸、コハク酸と酒石酸などの有機酸が含まれています。酸は紹興酒の甘味を抑えてバランスを取る役割があります。
構成成分
乳酸 | 糖質が代謝・分解によって作られる物質。主にヨーグルトやチーズなど乳製品に含まれている。 |
---|---|
酢酸 | 酢の主成分。酸味の源。 |
ピログルタミン酸 | 醤油に含まれるが呈味性(ていみせい)はないとされている。 |
コハク酸 | 貝類などに含まれる旨味成分。有機酸の一種。 |
酒石酸(しゅせきさん) | 酸味のある果実(特に葡萄やワイン)に多く含まれる有機酸。 |
「苦」(クー)
苦さの度合。紹興酒には多種のアミノ酸が含まれています。アミノ酸のうち、8種類のアミノ酸は苦味を持ちます。苦味は紹興酒にたくましさと淡麗さを引き出します。
構成成分
アミノ酸の苦味成分8種 | フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン |
---|
「辣」(ラー)
ドライさ。アルコール、イソアミルアルコール、高級アセトアルデヒドなどの成分で構成されます。適当な辛味は食欲を出せる作用があり、紹興酒に欠かせない味の一つといえます。
構成成分
イソアミルアルコール | ラム酒やウィスキーの香りの元、高級アルコール |
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イソアミルアルコールとはインキのような香り。普通のエタノールより、重めの味わいでアルコール感の源です。 高級アルコール類は例えば本格焼酎におけるコクや旨味のもとともいえます。
中国の文献を直訳すると、「辣=アルコール感」なのですが、日本酒においてはアルコール度数が高いと甘味が強くなる傾向があります。時折、中国の方で「白酒は辛くて飲めない」という言い方を耳にします。アルコールが高い=辛いという表現だと解釈していますが、日本酒でいう「辛口」のニュアンスとは合わない気がしています。なのでここでは僕の個人的な解釈を用いて「ドライ」としました。
「鮮」(シエン)
旨味の度合。 主にアミノ酸の中のグルタミン、アスパラギン酸、発酵で酵母が分解されたヌクレオチドなどで構成されています。鮮味は紹興酒と他の酒を区別てするための重要な要素です。
構成成分
グルタミン | 昆布ダシの主成分。酸味の素。 |
---|---|
アスパラギン酸 | 旨味や酸味の素。※この二つはトマトの旨味を握っている |
ヌクレオチド | — |
イノシン酸 | — |
グアニル酸 | よくダシとして使用されるものに含まれる。椎茸など |
「渋」(スー)
えぐみの度合。紹興酒の渋味は主に乳酸、チロシン、ブタノールとペンタノールなどの成分で構成されています。適度な渋みは紹興酒に厚みを与え、奥深い味わいをもたらします。
構成成分
乳酸 | — |
---|---|
チロシン | 苦味成分。バナナやアボガド。ジャリっとした食感の元にもなる |
ブタノール | 香辛料(スパイス)からその有効成分を抽出 |
ペンタノール | チーズ等に天然に存在する成分 |
紹興酒の六味を知っておいた方がいい理由
ここまで解説してきた六味。これを知っているかいないかで、大きな違いが生まれると僕は思っています。
なぜなら、六味を知ることで、その紹興酒の個性を掴み取ることができるからです。
まず紹興酒を飲んでみて、甘味が強いのか、渋味が強いのか、酸味が強いのか、旨みが強いのか・・・六味の何を強く感じるのか、弱く感じるのか。また、どれも綺麗に調和しているのか?
このように、六味があることで味の基準が生まれます。飲む側にとって酒の個性を明確にするためにも、これをうまく活用すべきだと僕は考えます。
最初はよくわからないかもしれませんが、甘味や酸味、苦味などはわかりやすいのではないでしょうか?
感覚的に掴み取りやすいものからで構いません。それらを少し意識して紹興酒を飲んでみると、各銘柄の違いもわかりやすくなってきます。
紹興酒初心者・ツウにおすすめしたい銘柄
紹興酒がさまざまな味で構成されていることがわかりましたか?
紹興酒とひと言で言っても、六味のバランスは銘柄によって異なり、さまざまな味わいの酒があるのです。
そして、この六味を元にすると、紹興酒初心者向けとツウ向けに合った味のタイプが見えてきます。
紹興酒初心者におすすめの味わいとは?
紹興酒が初めての方にはクリアで爽やかな味わいだったり、ほんのり甘味があるタイプのものがおすすめです。
紹興酒はワインとは違う乳酸由来の酸味や、発酵や熟成による独特な風味があります。初めてなら、この辺りが優しめな味わいのものから始めた方が良いでしょう。
六味でいえば、「甜」「酸」「鮮」このあたりのバランスがしっかり取れているものが良いです。
・・・と言われても「どれがいいのかわからない」ですよね(笑)
紹興酒初心者におすすめの銘柄を下記に記載しておきます。ご参考になれば幸いです。
おすすめのブランド・銘柄紹介
東湖12年(ドンフー)
味わいの特徴としては、すっきりとした酸味のあとに、心地よい甘味と旨味が口の中に広がります。雑味がなく、「これ、紹興酒!?」と思えるぐらい非常に飲みやすいです。ボトルデザインも可愛らしくて目を引きます。ネックとしては、コルクが弱いのとボトルの形状のせいで開栓後にお酒の空気に触れる面が広いため、劣化しやすいです。開栓したらなるべく早めに飲んだ方がいいですね。
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孔乙己12年(コンイージー)
かつての六大紹興酒「黄中皇」を製造する中粮酒業が誇るヴィンテージブランド。
紹興酒と比較して軽やかでするっとぬけていく喉越し。非常に丸みがあって優しい味わいでさまざまな料理にも合わせやすいです。「飲みやすい!」と評判の酒です。
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紹興貴酒8年(しょうこうきしゅ)
上の2品は値段がやや高めですので、リーズナブルかつ手軽に入手できる紹興酒もひとつ。
この紹興貴酒8年は、Amazonなどで手軽に入手できます。味わいはまろやかで、嫌みなく飲みやすいです。飲みやすさを追求して造られているのがよく伝わります。
紹興酒ツウにおすすめな味わいとは?
紹興酒ツウの人は、紹興酒特有の風味を求めます。
6つの味覚でいえば、「苦」「渋」「酸」「辣」がどっしりと感じられるもの。こちらもおすすめのブランドを下記に記載します。
おすすめのブランド・銘柄紹介
神気10年(シェンチー)
口に含むと昔懐かしい古風な味わい。紹興酒らしさをダイレクトに感じられるフルボディ的なポジションの紹興酒です。やや酸が飛び出ていながらも、渋味や苦味、全ての味をまとめるアルコールのどっしり感がこのお酒の強さを支えています。
黄中皇5年(ファンジョンファン)
かつて六大紹興酒として古越龍山、会稽山、塔牌などと共に紹興の代表ブランドである「黄中皇」(ファンジョンファン)。独自の黄金比率が生み出した濃醇な味わい。5年ならではのやや荒ぶれた若々しさこそツウが追い求める味にふさわしいといえます。
紹興原酒10年
紹興酒は基本的にブレンドをしますがこの紹興酒は100%10年原酒で造られた酒です。酸味を「苦」「渋」「鮮」がしっかり下支えしており、飲みごたえも十分!
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まとめ
今回は、紹興酒の六味について解説いたしました。
「紹興酒が苦手!」という方も、自分に合った銘柄であればもしかしたら好きになってしまうかも?
ツウな方は六味を意識することでより深く紹興酒の世界へと入り込んでいけることでしょう。
ではまた。下次见!